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見せない、その胸中 5

Penulis: 花室 芽苳
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-02 21:50:12

 だからと言って彼女らの思惑通り、ショックを受けて泣いて怖がってやるつもりもない。

 私を梨ヶ瀬《なしがせ》さんから引き離すのが目的だろうが、私からそれが出来るなら苦労はしていない。

 ……こんな陰湿な嫌がらせじゃなく、どうせなら梨ヶ瀬さんに直接そう頼めばいいんでしょうに。

「さて、どうやってここから出ようかしら」

 スマホはデスクに置いたままだし、ここには連絡用の電話機も設置されてない。しかも建物の端にあり滅多に人がやってこない場所で、カップルの密会に使われてるという噂もある。

 窓を開けて下を見れば、やはり飛び降りれる高さじゃない。

 半分は梨ヶ瀬さんのせいなんだし、私がいない事に気がついて助けに来てくれないかな。なんて冗談半分で考えた後、馬鹿馬鹿しいと思って笑い飛ばしかけた。

 その時……

「横井《よこい》さん、ここにいるんでしょ?」

 今の声、梨ヶ瀬さんだ!

 驚いているとすぐにカチャリと鍵の音がして、ゆっくりと資料室の扉が開いていく。

 いつもと変わらない笑顔で、資料室の中へと入ってきた彼。

 窓の近くに立っていた私の姿をじっくりと確認したかと思うと、手首を掴んで資料室の外へと連れていく。

 ……何故、どうしたのかと聞いてこないの?

 こんなところに閉じ込められていれば、誰にされたのかとか気になるはずでしょう? 変わらない笑顔では、梨ヶ瀬さんの感情はちっとも読めない。

 少しくらいは笑顔に隠された、その胸の内を見せてくれてもいいでしょうに……

「ねえ、どこに行くんですか? こっちは私たちの部署とは、逆方向ですよね」

 いつもなら私に合わせてくれる歩幅も、今はそうではなくなっている。高身長の彼についていきながら訪ねるが、返事をする気はないらしい。

 もしかして怒ってる?

 さっきはいつもの笑顔だったはずなのに、彼の後姿からは少し怒りを感じるような気もする。

 ……この人、私を助けに来てくれたんじゃないの? それなのに、どうしてそんな態度をとるのよ。

 梨ヶ瀬さんの考えている事が分からないまま、事務所に近いある一室に連れていかれる。

 ここには休むためのベッドが二台と、色んな薬や衣料品が置かれた部屋。医師や看護師はいないが、体調が悪い時はここで休むようになっている。

「あの……私どこも悪いとこは無いですよ?」

 もしかしたら梨ヶ瀬さんは私が閉じ込められた時に
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    「……聞いてるよ、ちゃんと。だけどこれでも結構焦ったんだ。たまたま鷹尾《たかお》に横井《よこい》さんが資料室に入るところを見たと、教えてもらえたからすぐに探し出せたけど。その時の俺の気持ちは、横井さんにはわかんないでしょ?」 なるほどね。梨ヶ瀬《なしがせ》さんが私を見つけ出せたのは、鷹尾さんのおかげだったんだ。それなら彼に、何かお礼をしなくては。 でも梨ヶ瀬さんは、本気で私のことを心配してくれていた。いつもだったら迷惑だと思うのに、なぜか悪い気はしなくて。「分かんないっていうか、想像も出来ないですよね。梨ヶ瀬さんは、私に本心を見せようとはしてませんから」 そういうのなら、もっと私に本音を聞かせて欲しい。素直な感情を伝えてくれなきゃ、梨ヶ瀬さんの考えを理解するのはまだ無理だから。「そんな言い方は狡い、ちょっとは分かろうと努力してくれたっていいのに」「狡いのはいつもの梨ヶ瀬さんです。私はちっとも狡いことは言ってませんよ?」 珍しく梨ヶ瀬さんに言葉で勝てそうな気がする。いつもなら余裕の返しも、今日はいつまで経っても来ないようだから。 調子に乗って梨ヶ瀬さんにとどめを刺してみようかな、なんて極悪な事を思い浮かべた。その一瞬……私の身体をふんわりと包む、最近よく嗅ぐ爽やかな香水の香り。「あーあ。もういっその事、君を俺の部屋に閉じ込めてしまえればいいのに……」 ええと、これは梨ヶ瀬さんのいつもの冗談? それともちょっと独占欲強めな、彼の本音だったりするのかな。 そのどちらにしても……「もしかしてヤンデレなんですか、梨ヶ瀬さんって」 余裕綽々なところばかり見せるくせに、私を閉じ込めたいだなんて。もしかして性格だけでなく、愛情表現まで歪んでいるの? もちろん私は素直に閉じ込められてあげる気なんてない、それくらい彼だって分かっているでしょうに。「俺が真面目に話してるのに、そんな風に茶化さないで」 茶化したつもりなんて無かったのに、真剣な顔をした梨ヶ瀬さんにピシャリと言われてしまった。じゃあこんなこと言われて、私はどう答えればいいのよ。「分かってますよ、それくらい。ただ、私も貴方に一言だけ言わせてもらっていいですか?」「……何?」「さっきは、資料室に助けに来てくれてありがとう……」 本当は彼が来てくれてすぐに言おうと思ったの。だけど梨ヶ瀬さんは

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    「どうしてやろうかって、いったいどういう……?」 おそらく自分にとって良い意味とは思えないが、念のため確認してみる。 だって私と梨ヶ瀬《なしがせ》さんは仕事場も帰り道も、そして帰る家までも一緒で。もし彼が本気を出したら、その時は逃げることなど不可能な気がするから。「それも、言わなきゃ分かんない? それとも怖いもの見たさかな、知りたければすぐに教えてあげるけど?」 いつもの目が笑ってない笑みの方が良かった。 満面の笑みなのに彼の背中には真っ黒なオーラが見えるようで、私は急いで頭を左右に振った。 その視線の先に同じ部署の男性社員が目に入る、そう言えば彼に仕事で訊ねたいことがあったんだ。「いいえ! 充分、分かったような気がします。もうすぐそばなんで、先に出社しますね!」 私は梨ヶ瀬さんから離れ、その男性社員に声をかける。 どうやら彼も仕事の内容が気になっていたらしく、すぐに話に夢中になってしまった。 ……そんな様子を梨ヶ瀬さんが、どんな表情で見つめていたかも知らずに。「ところでさ、横井《よこい》はなんで梨ヶ瀬課長と一緒に出勤してたんだ? メチャクチャ目立ってたぞ」「うそでしょ、たまたま見えたとかじゃなく?」 部署に着いてパソコンを操作し、あらかた説明が済むと同僚からそう言われた。予想はしていたけれど、どうやら思っていたよりも周りの人に見られていたようで……「梨ヶ瀬課長人気だからなあ、女子社員に目を付けられないように気をつけろよ?」「……うん、そうする。でも私みたいな普通の女は相手にしない、って思われてるはずだし」 なんて同僚の前では大丈夫なふりをしたけど、そんな楽天的な予想は見事に外れるのだった。 朝礼を終えて、いつものように起動しておいたPCのメールをチェックする。特に問題はなさそうだと、引き出しから大きなファイルを取り出した。 急ぎの仕事も無かったはずだし、納期はまだ先だが手の掛かるものを仕上げておきたい。 今日はそのつもりだったのに……「横井さん。三年前のこの資料を、代わりに探してきてくれない? 今すぐこれが必要なの!」 向かいのデスクで仕事をしている先輩に頼まれて、作業を中断し資料室へ向かう。 雑用も押し付けられることが多いが、いつもは気さくに話しかけてくれる人だったので少しも疑いはしなかった。「あれ? 確か、いつもは

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    「ねえ、本当に私たちが出勤まで一緒にする必要はあります? どう考えても誰かに見つかって、会社で噂の的になる未来しか想像出来ないんですけど」 何度説得しても行き帰りは二人一緒だと譲らない梨ヶ瀬《なしがせ》さんに、思いきり嫌そうな顔を隠しもせずについていく。 今はまだマンションの最寄り駅だからいい、これが会社の近くになればそうはいかないはずだ。 別にうちの会社は、社内恋愛を禁止しているわけじゃない。だからと言って付き合ってもないのに、面白おかしく話題にされるのは嫌。「君のストーカーが、夜しか活動しないならいいんだけどね。横井《よこい》さんには俺がずっとついているって、あの男に分からせないと意味がない。そのために君が協力するのは当然でしょ?」「……もうそれ、聞き飽きました。出来るだけ協力はしますが、梨ヶ瀬さんも少しくらい私の立場を考えてくれたっていいのに」 本社から支社に課長として来たばかりの梨ヶ瀬さんは、その柔らかな物腰とスマートな容姿も手伝って女子社員の注目の的だったりする。 そんな赴任してすぐの彼が私のような女子社員に必要以上にそばに居れば目立つし、お互いに悪い意味で見られる可能性がある。 それなのに……「もちろん考えてるよ、考えたうえで妥協出来ない事だけ君に頼んでる。俺はあのストーカーに、横井さんを少しだって近づけたくないんだ」 ああ、本当にこの人は狡い。 こんな言い方をされれば、誰だって嫌だなんて言えなくなるって分かってるくせに。自分の事を心配しての行動なんだって言われれば、それは悪い気はしない。 ……私だってそんな風に感じる、ごく普通の女子だったりするのだから。「……もしかして、さっきのでテレていたりする?」「テレてなんかいません。そうやって、自分の都合に良いように思い込まれると迷惑です」 誰が素直に嬉しいなんて言ったりするものか。本気かどうかも分からない、この人を喜ばせるようなことはしたくないの。 真剣な言葉の後で、すぐこうやって茶化してくる。そんな貴方に、簡単に振り回されたりしない。「意外と慎重だよね、横井さんは。時には目を瞑って、新しいものに飛び込んでみるのも有りだと思わない?」「そうでもないですよ。私こう見えても結構、怖いもの知らずだって言われたりしますから」 嘘はついてない。だけどそのほとんどが、自分に対してでは

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